社員インタビュー

- システム開発部 XRチーム チーフ テクニカルディレクタ
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T・N
中途入社 / 10年
諦めない、強さ
前職でフィーチャーフォン向けのゲーム開発に携わっていた。
だが、スマートフォンへの転換期を境に、ゲーム開発はパラダイムシフトを迎える。
「開発が減って先が見えなくなり、ゲームに見切りをつけようと思いiPhoneアプリを開発する会社として、アップフロンティアを見つけました。」
iPhoneアプリの開発は未経験だったが、これまでの経験知があれば採用可能という会社の中でアップフロンティアがいちばん印象に残った。
「大きな組織で歯車になるのに抵抗があったので、仕事を任せてもらえる雰囲気のあったUPFTに魅力を感じました。」
入社から10年。
現在は、Unityをメイン開発ツールとしたチームを率いて、AR(=Augmented Reality:拡張現実)、VR(=Virtual Reality:仮想現実)、MR(=Mixed Reality:複合現実)のすべてのアプリ・ソリューション開発を担う。
「必然的にエンタメ系のアプリ開発にも関わっており、ゲームではないにせよ、因果を感じます。」
開発環境は10年前と激変した。
「当時のゲーム業界では、最盛期でもわずか10MB程度のメモリーでリッチなゲームを作っていました。
端末仕様だからできません、では許されなかった。どんな環境でも、アイデアや頓知を効かして、何とかする。
その経験のおかげで、どんな状況でも踏ん張る精神力が鍛えられました。」
道具が揃えば、いいものができるとは限らない。
少ない道具でも、創意工夫で画期的なものは生み出せる。培われた経験知は、財産でもある。
「アイデアの引き出し方、課題の向き合い方は今も活きています。」
手触りへのこだわり
自身、無類のゲーマー。
ゆえに、ユーザ目線も持ち合わせており、自分が作るものの手触り感や操作感に徹底してこだわる。
手触り感とは一体、どういうものか。
「スマホアプリはソフトウェア開発キット(SDK)が提供されるので、ボタン操作もほぼ決まっています。
カスタマイズも可能ですが、そこまでやることはあまりありません。」
一方、XRアプリでは、ボタンを押した際の挙動一つまで作り込むことができる。
「ボタンを押してすぐにテキストウィンドウが表示されるか、一拍置いて操作音と同時にウィンドウが表示されるのがいいか。
そこの作り込みがプレイヤーの操作感に影響します。もちろん隅々までこだわりはじめれば、キリがなくなります。
ただ、繰り返し操作するユーザーにとって使用頻度の高いボタンや画面については、時間の許す限りとことん作り込みます。」
トライ&エラーを重ね、プログラムを書いてはビルドし、触ってプレイし、違和感があれば書き直す。
その作業を繰り返し、動作を馴染ませていく。
それはどこか、建具師や金属加工の職人が、技術と感覚知で表面を滑らかに仕上げていく動作にも似る。
ものづくりの世界に通じるこだわりが、そこにある。
プレイヤーから、マネージャーへ
ここ数年のXR開発の中で最も規模が大きく苦労したのが、キャリア系VRアプリの開発だった。
「VRコンテンツを視聴できるアプリの開発で、四苦八苦した案件です。」
それは、気づきを与えてくれたプロジェクトでもある。
「もともと自ら手を動かすのが好きで、すべて自分でやりたいタイプ。プロジェクトの端々まで自分の意思が行き届かないと気が済まない。
まあ、簡単にいえば、いわゆる暴君でしたね。
でも、下につくスタッフが増え、業務タスクが増え、時間的な限界が訪れ、自分だけの力では
先々どうにも乗り越えられない見通しとなり、ディレクターやプロデューサーから怒られる場面もありました。」
すべて抱え込むので、とにかく忙しい。四六時中、指示したり注意したり。
でも結果、自分のやりたいことは何一つできない。次第に行き詰まり、疲弊する。
「もうこんなやり方はしたくないと思いました。
何かあったら、自分が責任をとればいいと、方針だけ決めて、スタッフに自由にやってもらうようにしました。」
視界は一変する。残業せずに済み、自分の時間を趣味に充てられるようになった。
「自分で手掛けたものとスタッフに任せたものは、もちろん仕上がりは違います。
でも、自分の方が高いクオリティかというと、そんなことはない。
スタッフのものは考えていたのとはちょっと違っても、キラリと光るところがあったり、
思いもつかないこだわりがあったり、いろいろ気づかされました。」
新しい道具を探して
XRは今、次々と新しいテクノロジーが生まれている。
新しい技術を調査し、使えるものなら、仕事に生かしていく。その最先端に触れている瞬間が楽しい。
「日々、さまざまなテクノロジーが公開されていますが、その中から自分たちが使うのに最適のもの、
どこか光っているものを見つけて、そこに強い可能性を感じる。それが刺激的なのです。」
さまざまなテクノロジーが群雄割拠するXRの世界で、今後、何が生き残っていくのか。
そこに目を光らせながら、自分たちが使う道具、遊び場を探す、そんな感覚だという。
「新しいものに触れながら、刺激を受けることにやりがいや楽しさを感じます。
たぶん、その刺激があるから、スタッフに仕事を任せてもストレスを感じなくなったのかもしれません(笑)。」
道具が、職人をつくるーーー以前、耳にした名工の言葉が、この人の笑顔に重なる。
- VIEW POINT
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開発者でありプレイヤーでもある。作り手と使い手という内なる境界を必要に応じて往還できることは、開発者にとって大きな武器になるだろう。きめ細かい仕事ができなければ、プロセスを正確に伝えることはできない。
その意味では、丁寧な仕事をしてきた経験知があるからこそ、場面に応じてスピード優先でまとめることも、丁寧に仕上げることもできる。複眼的な視点を持つことがリーダーに求められる資質だとすれば、今後さらに経験を積むことで後進を的確に導く模範的な上司となる可能性もあるだろう。
インタビュワー:高梨 哲